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2016年5月8日日曜日

一陽軒 特上豚骨 自家製麺


華壱」もそうですが、この「一陽軒」も、雑誌には取り上げられるしオタクブロガー達はこぞって取り上げるし、こういう、いかにも「話題の店です」という感じの店は、俺は好かんのですがね。
ですが、やっぱりそれを差し置いても、俺は「とんこつラーメン」が大好きです。フランス料理や懐石料理よりもとんこつラーメンのほうが美味しいと思うくらいに、本当に好きです。
ですので、やはりどうしても、この店の存在を放っておくわけにはいかないのです。ま、尤も、旬はもう過ぎたのかもしれませんが、それでも今だに、高確率で行列にぶち当たる人気店ではあります。
いわゆる、名古屋独特の「好来系」ラーメンに、豚骨ラーメンを掛け合わせた、というスタイルでしょうか。
俺はあまり好来系というものには興味が無く、したがって「好陽軒」とやらも食ったことは無いのだが、さんがぴあのラーメン本に「好陽軒DNE。」と書いておられたので、いやまあ俺は浅学ながらDN「E」という用語を存じ上げておりませんが、つまり好陽軒のご子息か養子か弟子か、あるいは非嫡出子か、そういった筋の方が経営されているのでしょうか。詳しくは先達方に譲ります(

豚骨ラーメンというものは、長時間もの間、強火でガンガン煮出すものであり、それだからこそあの、全身を内側から愛撫するような、えも言われぬ濃厚さを醸し出すことが出来るのであるが、だからつまり、店内はどうしても、それによって油汚れがこびりついてしまうものである。
しかし。この「一陽軒」の店内は、そんな豚骨ラーメンの店であるとは思えないほど、非常に清潔に保たれている。毎日、あの店長はじめスタッフさん達総出で、丁寧に清掃するのであろう。その徹底ぶりはすごいと思うけど、でもちょっとここまでいくと、やりすぎ、潔癖なんじゃないかとも思ってしまう。こんなに店内を綺麗にするのは大変だろうけど、その大変な手間の分だけ、ラーメンの価格に上乗せされているのだと思うと、手放しにそれが良いことだと賞賛することができない。もうちょっと掃除はそこそこでいいから、その手間賃の分、値段を安くしてもらったほうが、俺は嬉しいと思うのだけどな。
それに、接客も、大変丁寧なのは結構なことなのだが、これはちと行きすぎだと思うぜ。おしぼりの袋をいちいち回収してくれるし、ラーメンが出来たときも、いちいちカウンターのお客の目の前まで手を伸ばして置いてくれる。極めつけは、お客が店を出る時に、その都度いちいち3人の店員さんが全員ユニゾンで「ありがとうございました。またお越しください。お待ちしております。」と言って頭を下げてくれる。ラーメンを作る作業を一時中断してまで、ですよ。ここまで行き過ぎると、気分がいいというよりなんだか薄気味悪くなってくる。まるでヤクザの会合みたい。下っ端のヤクザが重役を送り出す時の挨拶ってこういう感じなんじゃないでしょうか。なんだか一瞬、自分が悪い奴になったような、後ろめたい気持ちになってしまう。
ラーメンなんて所詮庶民の食べ物。接客なんてもっとテキトーでいいから、その分値段を下げてくれたらいいのになあって思う。まあないものねだりなのかもしれないけど・・・
さて、そのような「丁寧代」が大いに上乗せされているであろうラーメンの価格は、と。

画質が荒くて見づらいですが・・・クリックで拡大します

どれどれ。一番基本メニューの「特上豚骨」で・・・・・・820円だって!?
高ぇーよっ!
もし、何も知らない人が、ふらっと通りかかって「ラーメンだから安く済むだろう」と考えてこの店に入ってしまったら・・・悲惨だろう。店に入ってしまった以上なにか注文しなければいけないが、一番安くても820円というのは、さすがにイタすぎる。俺は保守的な考え方なのかもしれないが、そういう場合の事も考慮に入れて、やはり「ラーメン」というものは、庶民の食べ物として、ある程度常識的な値付けをしなければいけないのだと思います。その点ではこの店はあまりにも値段が高すぎる。Too expensive.ちょっと常軌を逸脱しているように思うのだがどうか。
そして、今話題の?熊本風ラーメン、マー油の乗った「黒豚骨」になると一挙に900円台の大台に突入。さらにその「スペシャル」となると、な、なんと1640円!?
おいおい。片らけの「デブセブハイパー」よりも高いってどういうことよ。いやいや、それどころかこの値段じゃ、ラーメンじゃなくて、「イノーヴェ」や「フチテイ」のランチが食えるぜ。
いくら俺が、フランス料理よりもとんこつラーメンのほうが好きだと言っても、さすがに、実際に、フレンチのランチよりも高額な料金を、たかが一杯のラーメンに払う気にはなれないぞ。「とんこつくん」を名乗る俺ですらそう思うのだ。いくら原価がかかるのか知れないが、これはちょっとさすがに行きすぎではないだろうか。
この、ちょっと常軌を逸脱したように感じる値付けに対して、店側は以下のように言い訳している。




当店では、価格維持の為の努力を続けて参りましたが、メンマ、干し貝柱の著しい値上がりをはじめ、その他の食材、送料の値上がりに伴い値上げをさせて頂きました。

メンマに関しましては、度重なる高騰に相次ぎ、質が落ちてきたため、より良いものをご提供したいという強い思いから、問屋を変え、交渉の末、一陽軒専用のメンマを作って頂く事に成立しました。

(店内POPより引用)

いやはや。そうやっていろいろ理屈こねたあげく、結局値上げするんだろ?もちっとなんとかしてくれよ。
せめてさ、「食材の高騰に悩まされる昨今ですが、お客様のことを第一に考え、価格は据え置きにすることにいたしました」くらい言えないのかなあ。まあ、値下げしてくれるのが一番だけど。それでもせめて、据え置きくらいにはしてほしい。
メンマについて、問屋を変え云々とかあるけど、もっともらしい理由を書き連ねてるけど、実情はどーせ問屋とケンカしたとかそんなんでしょう。ラーメン屋なんてどこも我が強いですからね。「俺がオレが」っていう自己主張をお互いしすぎて衝突したんでしょう。まあ、自営業同士にはよくあるケンカですよね。で、その結果が、客へのしわ寄せ。みっともないったらありゃしない。(ちなみに、文法がなんだかおかしいですよね。作っていただく事「が」成立しました、でしょう。あるいは「作っていただくことに相成りました」とかさ。)
まっでも、こんなバカ高い値段でも、現にこれだけお客が殺到しているのだから、店側としてはそれで問題ないのでしょうね。まあお店ってのは結局、いかに儲けるかというのが本筋だから、そんなもんなのでしょう。



特上豚骨 ¥820

ところが、である。いや、しかし、この「一陽軒」の特上豚骨ラーメンは、涙が出るほどに、本当に美味しい!
やはり、とんこつ・イズ・ナンバーワン!ですねっ!
とんこつこそが、日本が世界に誇る最も重要なラーメン料理であると、俺は断言します。
この全身を包み込むような、柔らかくてあたたかで、それでいて尚且つ猛々しくダイナミックなド迫力の圧巻は、他のどんな素材によるラーメンの追随をも許さない。鶏も牛も、煮干しも、最高級本枯節だって、このとんこつスープの醸し出す味わいの偉大なる功績には、とうてい敵わないのである。
いやあ、前置きで散々文句垂れたけどさ、さすがにこんだけ美味いと、ちょっと参っちゃうよなあ。悔しいけど、この味そのものには文句のつけようがない。

さて、見た目は確かに、好来系っぽく見えますよね。特にこの、メンマがざっくり、太いあたりが。
しかし、鶏がら中心、和漢薬膳の複雑に混ざり合った香りが全面に出た好来系とはうって変わって、これは豚骨の骨の髄から出たエキスのあますところない旨みが全面に出ていて、まるて違った味わいなのです。要するに、好来系のフリをした全く別のラーメンってことでしょう。ほら、クリスマスになるとケーキとかによく乗っかってる、サンタクロースの形を模した砂糖菓子ってあるでしょ。あれと似たようなもんです。あれっ、だいぶ違うかな?
気を引いたのがこの、店名の文字を印刷したプリント海苔。あれぇっ、これって確か、「なんでんかんでん」が特許をとっていたんじゃなかったか?たしかなんでんかんでんの店内にそう書いてあった気がしたけどな。あれはハッタリだったのかなあ。それとも一応この一陽軒がなんでんかんでんに許可を得て使っているのだろうか。もう潰れたから勝手に使っていいってわけではないだろうし。それとも、あれとはまた別の技術なのだろうか。まあ、味とは全く関係ない部分ですが、ほんのちょっとだけ、興味が湧きました。詳しい方教えてください。
ともかくも豚骨の素晴らしさを、余すところなく悦楽できる逸品でありますが、やはり好来系のイメージということで、豚骨以外にもそれらしき材料は使われているようですね。上記に干し貝柱と書いてあるから、実際に使っているのでしょう。他にもやはりそういった中華料理の食材や、和の食材も使われているのかもしれません。ですが、それらは決して表にでしゃばることは無く、少なくとも俺が食べた感じでははっきりとはわかりません。しかしやはり、この一筋縄ではいかない深い豚骨の味わいは、そういった材料に陰ながら支えられてこそ、醸し出されているのでしょう。よくある豚骨魚介のWスープみたいなやつっていうのは、両者が主張しすぎて、ともすれば互いの魅力を相殺しあってしまう結果に陥りがちですが、この「一陽軒」の豚骨ラーメンは、豚骨というメインの主題がどっしりと腰をすえていて、他の食材は豚骨の味わいのふくよかさを一層ふくらませるための脇役に徹している。これは、すばらしいバランスです。この絶妙なバランスが、この「一陽軒」の豚骨ラーメンを、数多に溢れるいわゆる博多豚骨ラーメンとは全く異なる、独特の味わいを持つラーメンへ昇華させているのでしょう。
特筆すべきは、この独特の味わいを持つ濃厚豚骨スープの素晴らしさをより深化させる、全ての面においてギリギリの点を見切ったタレの加減である。これ以上薄かったら物足りないし、これ以上濃かったらせっかくの豚骨スープを壊してしまうといった、実に絶妙な塩梅である。もちろん、名古屋に数多のあの、イヤな甘ったるさは微塵も無い。いやあ、スープのみならず、タレの塩梅までもここまで完璧に作られると、「ここ本当に名古屋のお店?」って疑ってしまうなあ。はっはっは。
また、この太くてもっちりとした麺も、この濃厚な豚骨ラーメンを九州風のそれとは全く異なる独特のものに昇華させる一要因となっている。九州風の、ぱきぱきとした細麺もよく豚骨スープに合って美味しいですが、このしっかりしたコシの、弾力のある太麺はまた、豚骨スープの別の楽しみ方を示唆してくれる。なかなか、このような食感の麺を、こういった純然たる豚骨スープと共に楽しめるというお店は、案外珍しいのではないだろうか。横浜家系や二郎系なども豚骨ベースではありますが、この一陽軒のスープほどの純然たる豚骨ではないでしょう。その意味では、これは独特のものなのである。
具で特筆すべきものはやはりメンマであろう。メンマってのは、戻すときに時間をかければかけるほど美味しくなるらしいが俺には実際のところはわからない。しかし、この太いメンマは、実にざくざくと、瑞々しい食感なのである。時間をかけて戻すとこうなるのでしょうかね。こんなに美味しいメンマなら、メンマ増しにもしたくなるでしょう。高いけどね。

いやー。なんというか。この一杯の、すべての部分に関して、また総合的にも、全く手抜かりが無い。実にあますところなく丹精に築き上げられた至上の一杯である。ちょっと丁寧すぎるんじゃないの?ってくらい、すべてが完璧なのだ。
悔しいが、味そのものにはもう全く文句を付けられない。俺の大好きな「とんぱ~れ」に迫るどころか、ひょっとすると凌駕すらしている。いやはや。参ったなあ。脱帽です。

さて困った。これをどう評価していいものか。
「ラーメンなんて、味がすべて。美味けりゃなんでもいいのだ。だから、多少値段が高くても、実際の味に文句の付け所がなければ、文句なしにそれは素晴らしい店なのだ」と考える人も居る。俺がもしそういう人だったら文句なしにこの店には最高点をつけるだろう。しかし、俺はそういう考えの持ち主では無いのだ。
俺の考えはこうだ。「ラーメンなんて、美味くてお値打ちならなんでもいいのだ。多少サーヴィスが雑でも、多少店が汚くても、味が良くて値段がリーズナブルなら、文句なしに素晴らしい店なのだ」。
やはり、この店の値付けは高すぎる。とてもリーズナブルとは言えない。少々、常軌を逸しているように、俺は思うのだ。
味が良けりゃ高くてもなんでもいい、というのは、高級フレンチとか、高級懐石とか、高級中華とか、そういうジャンルには許されるだろうが、やはり大衆食にはそれ相応の限度ってものが必要だと思うのですよ。もちろん、3500円のカレーライスとか、一万円のラーメンとかも世の中にはあるけど、そういうのはどちらかというと「一発ネタ」でしょう。話題集めとしてはたまにそういうのがあってもいいとは思うけれど、そうではない、あくまで一般的大衆食としてのラーメンであるならば、できる限りリーズナブルに押さえて欲しいものです。
もちろん、大多数の中の一客に過ぎない俺がそんなことを願ってもしかたがないし、しかも実際に「一陽軒」はこの少々常軌を逸していると思える高値付けでも、連日繁盛している。繁盛しているなら、これ以上値段を下げる必要はないのであろう。お店としては当然、そういうことになる。
だけどねえ。食べる側の客である俺としては、なかなか複雑な気持ちですよ。
文句なしに旨いからといって、やはりラーメンにこれだけの金額は、なかなか出せません。
結果的には、やはり足が遠のいてしまいます。
こんな素晴らしいラーメンから足が遠のくなんて、実にもったいないとは思うのですが、でもやはり心情としては、そんな感じです。

てなわけで、お店としての今日の評価は:★★★★★ 5、です。

5ってのは、このブログの中では割合高評価の部類ですが、しかし値段があと200円、いや、150円でも安かったら、文句なしに10つけると思います。実際、「とんぱ~れ」には9を付けていますが、それは味の素晴らしさもさることながら、1杯500円という(今年から値上げして600円になっちゃいましたが、それでも)ラーメンとして本来あるべき、庶民にも気軽に負担無く食べられるという安価を実現し続けているという点も大いに踏まえているのです。保守的かもしれないですが、やっぱり俺は、値段の面に限らず「ラーメンはこうでなくっちゃ!」という考えは、結構、強いのです。
バカ丁寧とも思えるほど丁寧すぎるな接客サーヴィスや徹底しすぎる清掃を、もうちょっとばかり軽減して、その分値段を安くするということは、やはり、出来ない相談なのでしょうか?


特上豚骨 自家製麺 一陽軒 いちようけん
名古屋市天白区植田西 2-1601
11:00~14:00
19:00~22:00(日曜祝日夜は18:00~21:00)
定休日:木曜日

7 件のコメント:

  1. ディスりから一転、味については激賞で良かったです(笑)。僕も一陽軒はとても美味しいと思っています。確かにノーマルなラーメンが1杯820円という価格にはビックリしましたが、個人的には値段相応なクオリティでアリだと思います。

    相変わらず歯に衣着せぬ、誠実な批評が素晴らしいです。とんこつくんと比較すると、他のラーメンブロガーは多かれ少なかれどっちつかずで、逃げの姿勢が目立ちます。ですから、情報としては役に立つ部分もありますが、批評としてはさほど有用ではないですよね。

    今回も堪能いたしました。さらなる飛躍を期待します(笑)。

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    1. >丸和嫌い
      いやあ、俺のような人でなしににそう仰っていただけるだなんて感無量ですよ。
      まっ、俺はただ単に気晴らしとしてこれをやってるに過ぎないですからね。褒めるよりもけなすほうがスカっとするもんです。人間ってのはえてして、そういう風に性悪にできているもんです。だから、できるだけけなしポイントを見つけだしてチクチク刺すのが俺の楽しみなんですがね。
      ここまで美味しく作られちゃうと、味に関しては全くけなしようがなくて悔しいんですよね。仕方がないから他の部分でけなして腹いせするというわけです笑

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  2. 素直においしいって言えないのね、可哀相な貴方。

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    1. >匿名さん
      投稿ありがとうございます。またお越し下さい。お待ちしております。

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  3. 偶然見つけてから、とんこつくんの感想や意見に賛同しまくりです。(性癖以外ですが)
    叩きも多いですが頑張ってください。これからも楽しみにしてます。
    ちなみにご子息が正解みたいですよ。

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  4. >匿名
    なるほど、ご子息なのですか。有用な情報ありがとうございます。ってことは文字通りDN「A」ってことですね。
    見つけて下さってありがとうございます。俺としては別に、単なる気晴らしなので好き勝手に書いてるだけです。というか、なんでみんな遠慮して書くのかよくわかりません。
    別にブログやったって一銭も儲かるわけじゃないし。いや、あるいは、ブログで稼ぐ方法とかもひょっとしてあるのでしょうか?なんかイヤらしい感じですよね。だから俺はブロガー嫌いなんです。

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  5. 両親の店に行って見ると送り出す時の挨拶の意味がわかりますよ。「ありがとうございました。また、どうぞ。」これを両親でユニゾンでハモリます。

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